
国立大学法人 京都工芸繊維大学 応用生物学 生体機能学研究室
Neuroscience Laboratory, Department of Applied Biology, Kyoto Institute of Technology

研究・教育
視床下部(間脳)や延髄(脳幹)は、体温調節や体液のバランス、血圧、食欲、嘔吐、睡眠など、私たちの生命を維持するうえで欠かせないさまざまな生理機能を調節しています。これらの重要な働きが障害されると、全身に深刻な影響が及びます。脳には、血液脳関門(BBB)と呼ばれる構造によって血液との間にバリアがある一方で、脳室周囲器官と呼ばれる一部の領域ではこのバリアが存在せず、血液中の情報を直接感知することができます。こうした領域は、体内の変化を常にモニターし、視床下部や延髄の神経核と連携して速やかに生体反応を引き起こす重要な役割を担っています。また、近年の研究から、脳幹(特に延髄)にも神経幹細胞が存在し、新たな神経細胞やグリア細胞を生み出すことで、脳の機能維持や、病気や損傷からの回復にも関わっていることが示されています。
私たちの研究室では、こうした脳室周囲器官の血管系の特徴や、脳幹における神経幹細胞の働きなど、これまであまり解明が進んでいない脳の仕組みに注目しています。さらに、細菌感染によって引き起こされる発熱や脳内炎症といった生体防御反応において、病原体関連分子パターン受容体 Toll-like Receptors(TLRs)や温度感受性チャネル Transient Receptor Potential Channels(TRPs)といった分子が果たす役割を解明することにも取り組んでいます。マウスを用いた免疫組織化学、行動解析、遺伝子・タンパク質解析など、多様な手法を駆使しながら、脳と体のつながりを多角的に探求しています。前任の宮田教授(現・名誉教授)の先駆的な業績を引き継ぎ、視床下部や延髄と、それらと密接に関連する脳室周囲器官の機能や、脳幹における神経幹細胞の役割をさらに深く探求することで、脳の新たな機能理解に貢献し、医学、薬学、生命科学の発展に寄与することを目指しています。
研究課題
-
細菌感染による体温制御変調におけるTLRsおよびTRPsの脳内機能の解明
-
血液脳関門を欠く脳室周囲器官における血管新生およびミクログリアの機能の解明
-
脳疾患によって損傷を受けた脳幹の神経細胞およびオリゴデンドロサイトに対する、神経幹細胞を介した修復機構の解明





新着情報
2025年03月 退職 宮田教授が定年にてご退職されました。
修了・卒業 博士前期課程の円城・小村・西川・藤居・安元さんが修士課程を修了。学部の小湊さんが卒業。
2024年11月 論文 成体マウス延髄最後野グルタミン酸誘導神経細胞死と再生に関する神戸大学理学部生体分子機構との共同研究
Fujii R, Nambu Y, Sawant Shirikant N, Furube E, Morita M, Yoshimura R, Miyata S. Neuroscience. 2024.
2024年03月 修了・卒業 博士前期課程の大江・田中・柳井さんが修士課程を修了。学部の藤田さんが卒業。
2023年09月 論文 イシリン(寒冷感誘導剤)がリポ多糖誘発マウス敗血症反応を緩和することを示した研究
Komura M, Miyata S, Yoshimura R. Neurosci Lett. 2023.
2023年08月 論文 成体マウス脳におけるTRPM8発現ニューロンの特性に関する東邦大学医学部解剖学研究室との共同研究
Tsuneoka Y, Nishikawa T, Furube E, Okamoto K, Yoshimura R, Funato H, Miyata S. Neurosci Lett. 2023.
2023年03月 修了・卒業 博士前期課程の岡本・春日・堀江・堀川さんが修士課程を修了。学部の盛田さんが卒業。
2022年10月 論文 脳室周囲器官の血液脳間コミュニケーションにおけるグリア機能に関する総説
Miyata S. Front Neurosci. 2022.
2022年09月 論文 TRPM8欠失マウスにおける慢性疾病反応に対するリポ多糖末梢投与の影響に関する研究
Horikawa R, Oe Y, Fujii R, Kasuga R, Yoshimura R, Miyata S. Neurosci Lett. 2022.
2022年05月 論文 マウス脳の橋および延髄におけるTRPM8発現三叉神経線維の分布に関する研究
Kurganov E, Okamoto K, Miyata S. J Chem Neuroanat. 2022.
2022年04月 論文 成体マウス脳の脳室周囲器官におけるタニーサイトのトランスサイトーシスに関する研究
Okamoto A, Fujii R, Yoshimura R, Miyata S. Neurosci Lett. 2022.
2022年04月 メンバー 吉村准教授が生体機能学の一員になりました。
2022年03月 修了・卒業 博士前期課程の杉本・白木・南部・鳥居さんが修士課程を修了。学部の永野さんが卒業。
学位 高木・平塚さんが博士の学位を授与されました。
受賞 南部さんが博士前期課程最優秀賞を受賞
2022年02月 論文 炎症時におけるミクログリア増殖が敗血症症状を抑制していることを証明した研究
Torii K, Takagi S, Yoshimura R, Miyata S. J Neuroimmunol. 2022
2022年01月 論文 TRPM8が寒冷刺激による脳内の自律神経系活性化に関与していることを証明した研究
Kasuga R, Shiraki C, Horikawa R, Yoshimura R, Kurganov E, Miyata S. Physiol Behav. 2022
2021年06月 論文 TRPM8が発熱と体温低下のスイッチングに関与していることを証明した研究
Shiraki C, Horikawa R, Oe Y, Fujimoto M, Okamoto K, Kurganov E, Miyata S. Brain Behav Immun Health.
2021.
2021年04月 論文 レプチンが最後野の神経幹細胞増殖を促進していることを証明した研究
Nambu Y, Ohira K, Morita M, Yasumoto H, Kurganov E, Miyata S. Neurosci Res. 2021.
2021年03月 卒業 博士前期課程・野山・石井・パクさんが修士課程を修了しました。
学位 中野さんが博士の学位を授与されました。
2021年02月 論文 運動とコルチコステロンが最後野の神経幹細胞増殖を抑制していることを証明した研究
Nambu Y, Horie K, Kurganov E, Miyata S. Neurosci Lett. 2021.
2021年01月 書籍 宮田著「著書:Fenestrated capillary and dynamic neuro-glial-vascular reorganization of the adult
neurohypophysis. Glial-Neuronal Signaling in Neuroendocrine Systems (Ed. By Tasker) が Springer-Nature
より出版されました。
2020年04月 論文 脈絡叢における血管新生に関する研究
Asami A, Kurganov E, Miyata S. J Chem Neuroanat. 2020.
2020年03月 卒業生 卒業生の古部さんが、東邦大学・医学部・助教から旭川医科大学・解剖学講座・助教として移籍しました。
2020年03月 卒業 博士前期課程・浅見・岡本・村山・安本さんが修士課程を修了し就職しました。
2020年02月 論文 脳室周囲器官におけるtanycyte-like神経幹細胞のphenotype解析に関する研究
Furube E, Ishii H, Nambu Y, Kurganov E, Nagaoka S, Morita M, Miyata S. Sci Rep. 2020.
2020年01月 論文 脳室周囲器官におけるC1q発現に関する研究
Kawai S, Kurganov E, Miyata S. Cell Biochem Funct. 2020.
2020年01月 論文 Fluoxetineが脳弓と脳梁のミクログリアとオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖に与える研究
Fukushima S, Kurganov E, Hiratsuka D, Miyata S. Pharmacol Rep. 2020.
2019年10月 書籍 古部・宮田著「総説:脳室面は成体における神経幹細胞のニッチである」が掲載されました。 BIO Clinica 11月号「特集: iPS再生医療の最前線(京都大iPS細胞研究所・長船健二編)」2019
2019年05月 論文 脳のTLR2シグナル伝達経路による発熱とsickness behaviorを解明した研究
Murayama S, Kurganov E, Miyata S. J Neuroimmunol. 2019
2019年05月 論文 Lysolecitinnによる延髄の局所脱髄修復に関する研究
Hiratsuka D, Kurganov E, Furube E, Morita M, Miyata S. J Neuroimmunol. 2019.
2019年05月 論文 カプサイシンの経口摂取ではTRPV1依存的短期体温低下と非依存的長期代謝活性化作用の存在を示した研究 Inagaki H, Kurganov E, Park Y, Furube E, Miyata S. Physiol Behav. 2019.
2019年05月 書籍 平塚・宮田著「総説:延髄の神経幹細胞による髄鞘修復」が掲載されました。
BIO Clinica 5月号「特集: 免疫性神経疾患の治療学(国立精神・神経医療研究センター・山村隆編)」2019
2019年05月 論文 京都府立医科大学との共同研究がJ. Neuroinflammationに掲載されました。
2019年03月 学位 博士後期課程・古部さんが、学術博士を取得し、東邦大学・医学部微細形態学分野の助教として就職しました。
2019年03月 卒業 博士前期課程・稲垣、平塚、高木さんが修士課程を修了、課程4年・藤本さんが卒業しました。
2019年03月 テレビ報道 毎日放送「この差って何?」の番組で本研究室の論文を根拠に、世の中の常識が覆えり
「唐辛子は冷え性の人には逆効果」であることが報道されました。
2018年03月 新任教員 KURGANOV, Erkin助教が着任しました
2018年02月 論文 多発硬化症モデルマウスにおけるオリゴデンドロサイトの修復に関する研究
Hiratsuka D, Furube E, Taguchi K, Tanaka M, Morita M, Miyata S. J Neuroimmunol. 2018.
2018年02月 論文 脳のLPS-TLR4シグナル伝達経路と発熱のネガティブ制御機構を解明した研究
Muneoka S, Murayama S, Nakano Y, Miyata S. J Neuroimmunol. 2019.
2018年01月 論文 細菌感染程度の炎症でも脳のミクログリアが増殖することを明らかにした研究
Furube E, Kawai S, Inagaki H, Takagi S, Miyata S. Sci Rep. 2018.
2017年11月 論文 脳室周囲器官のミクログリアは常に活性化状態にあることを明らかにした研究
Takagi S, Furube E, Nakano Y, Morita M, Miyata S. J Neuroimmunol. 2019.
2017年10月 論文 視床下部下垂体後葉系の構造的可塑性に関する総説
Miyata S. Front Endocrinol (Lausanne). 2017.